「リンパ」って?なに?

そもそも「リンパ」とは何でしょうか?

ドレナージュとは身体の「排液」「排出」という意味をもつフランス語で、リンパドレナージュは「むくみの液(リンパの液)を皮下から排液する」という意味になります。

リンパ管の中を流れているのがリンパ液です。

リンパは、リンパ管とリンパ節から成り、リンパ節の数は約800ヵ所以上あるといわれ、リンパ管とともに全身に張り巡らされています。

*** リンパの役割

リンパは、2つの大切な役割を担っています。

◇血管(動脈)から不要となった老廃物を回収して運び、集められた老廃物は血管(静脈)と合流し、尿や汗として体外に排出(排出機能)

◇体内に入ってきた有害なウイルスや細菌などから体を守る(免疫機能)

リンパ液は静脈に沿うように流れています。

ただリンパ液には血液における心臓のようなポンプの役割をするものがないことから「ストレス」「睡眠不足」「疲労」などの影響を受けて流れが滞りがちです。

老廃物が滞ることで起こる代表的な症状は「むくみ」。放置しておくと「脚」にセルライト「顔」には吹き出物や肌荒れくすみなどのトラブルを起こすこともあります。

その滞りがちなリンパ液をスムーズに流してあげるのに効果的といわれているのがリンパドレナージュです。

 美容と健康から見るリンパドレナージュ

医者が考案したことからもわかるように、リンパドレナージュはもともと医療目的の手技。

 

ですが現代では美容目的が多く浸透しています。

「医療目的のリンパドレナージュ」と「美容目的のリンパドレナージュ」に分けて説明していきます。

医療目的のリンパドレナージュは「用手的リンパドレナージ」「医療徒手リンパドレナージ」とも呼ばれ、

主にがん手術後に起こる後遺症のひとつ「リンパ浮腫」の解消に用いられることが多くなっています。

 

リンパ浮腫とは、体の中を張り巡らされたリンパ管の中のリンパ液が、何らかの障害によって流れが悪くなって起こる腕や脚のむくみのことです。

特に「乳がん」「子宮がん」「卵巣がん」「前立腺がん」「皮膚がん」などの治療において、

外科手術でリンパ節を切除した場合などリンパ液の流れが悪くなって起こりえます。

脚や腕にリンパ液がたまって白っぽくむくむのが特徴的で、一般的なむくみは水ですが、リンパ浮腫の場合はタンパク濃度の濃いむくみであり、ねっとりした水分だと考えるとイメージしやすいでしょう。

医療目的のリンパドレナージュは、このリンパ浮腫を改善する方法のひとつとしてその効果を認められ、医療従事者のみ医療現場で取り入れられています。

 

医療目的リンパドレナージュの施術について詳しく見ていきましょう。

医療目的のリンパドレナージュは、皮膚表面の浮腫液を順次深部のリンパ系に送りこむ施術です。深部リンパ系への入り口は腋(わき)および鼡径部(そけいぶ)リンパ節です。

そのため、手術で腋や鼡径部のリンパ節が切除されることでこの部分のリンパ液の流れが悪化することが、リンパ浮腫の根本的な原因となっています。

リンパ液は手足の先端から腋や鼡径部のリンパ節を経て深部リンパ系へと流れ込み、最終的に首の付け根付近で鎖骨下静脈に合流します。

施術は、リンパ浮腫が起こった患者の足または手の先端から中心部(心臓)に向けて行います。

腋または鼡径部周辺のリンパ液の流れを改善させることで全体のリンパ液の流れを良くします。

 

リンパ浮腫が起きた場合は、いくつかの治療法を組み合わせて対処します。

A:患肢である脚や腕を上げる(横になって脚や腕を高くしておく)
B:患肢に弾性ストッキングや弾性スリーブを装着して押さえる(朝起きてすぐに装着し寝る寸前に外す。)
C:患肢を軽く動かす
D:リンパドレナージュ
E:スキンケア

リンパ浮腫ではリンパの流れが悪くなって免疫力が低下するので、「蜂窩織炎(ほうかしきえん)」(皮膚の深い層から皮下の脂肪組織にかけて細菌が感染し、炎症を起こす病気。感染部位が腫れて赤くなり、痛みが生じる)を起こしやすくなることから、スキンケアも必要。

なお、リンパドレナージはリンパ浮腫治療のメインの方法ではありません。治療は日常生活において適切な弾性ストッキングや弾性スリーブを使用することが基本となります。

むくみの起きている脚や手を高い所に置いたり、動かすことは、普通のむくみの解消にも役立ちますので、試してみてください。

 

医療目的のリンパドレナージュは、施術者が専門的な研修を受けて習得するものです。

2016年の公的医療保険の適用以来、リンパ浮腫に対応する医療機関は増えています。

しかしながら、その医療機関で手術をした患者への対応に追われて、なかなか外部の患者を受け入れることができないのが実情のようです。

がん手術に由来するリンパ浮腫でお悩みの場合は、まず主治医に相談してみるのが良いでしょう。

それでも医療機関が見当たらない場合は、

なお、医療目的リンパドレナージュを行えるのは、医療リンパドレナージセラピスト、リンパ浮腫セラピストなどの資格保持者のみです(これらは医師・看護師・理学療法士・作業療法士などの国家資格保持者しか取得できません)。

また、医療機関以外に、民間で「リンパドレナージュ 」や「リンパマッサージ」をうたって施術する施設もありますが、これらは医療用のリンパドレナージュとは異なります

がん患者でリンパ浮腫に悩んでいる方は、かえって症状を悪化させる可能性もありますので、そのような施設には行かないようにしてください。

美容目的のリンパドレナージュ

ここから先は美容やリラクゼーションを目的としたリンパドレナージュ について解説していきます。

 

美容・リラクゼーション目的のリンパドレナージュは、デトックス作用や血行促進効果などがあるとされ、エステサロンの人気メニューのひとつとして定着しています。

思い立った時に気軽に受けることができるのも魅力です。

最初にお伝えすると、美容・リラクゼーション目的のリンパドレナージュで効果ありといわれているものの多くは、施術を受けた人の体験的・主観的なもので、医学的根拠はありません。

公的に認められ、健康保険の適用も認められている医療目的リンパドレナージュとは、その点が違うといえるでしょう。

 

しかし、だからといって、受ける価値がないとはいえません。実際に、体の不調が改善したという声もまた多いのです。

比較的効果があるといわれているのは、以下のようなものです。

①むくみをとり、肌の調子を改善させる
代謝を高めてむくみを軽減させる。また、毒素の排出効果から、アトピー性皮膚炎やにきびの軽減も報告されている。

②肩こりや冷え性の軽減
疲労やストレスによって滞りがちになるリンパの流れを改善させることで、肩こりや冷え性の軽減効果が期待できる。

③リラクゼーション効果
多忙のため交感神経が優位になったままで休息をとりにくい方の副交感神経へのスイッチを入れ、リラクゼーション効果をもたらす。

どれも起こりがちな症状ですね。多忙によるストレスや過労に悩まされ、その結果、リンパの流れが滞りやすい方も多いはずです。

私たち現代人にとって、リンパドレナージュは、リンパの流れを改善するという健康面での効果のみならず、リラックス効果をももたらしてくれるものとして、生活のサイクルに取り込むのも良いでしょう。

リンパマッサージとリンパドレナージュの違いは何。

「リンパドレナージュ」と並んで「リンパマッサージ」という言葉も聞かれますが、両者にはどのような違いがあるのでしょうか?

2010年にリンパ浮腫治療における用語の統一が行われ、「マッサージ」はいわゆる肩や腰の凝りをとるための「マッサージ」であり、リンパ浮腫における「マッサージ」は優しく皮膚をさするように行うもので、本質的には異なるものなので「リンパドレナージ」として区別しようということになりました。

 

医療界においてはこのような区別をしていますが、美容・リラクゼーション界では厳密な区別はしていないことが多いようです

リンパの流れに合わせてマッサージをする施術全般。コリをほぐすために圧をかけるので、痛みをともなう場合もある。
リンパの流れを滞らせている原因を取り除き、リンパの流れを改善させるための手技で、強い圧はかけない。

という分け方で、リンパドレナージュはリンパマッサージの一種という見方が一般的。

ですが、どちらも「リンパの流れを良くして老廃物の排出を促す」ことを目的とした施術と見て良さそうです。

なお、「リンパマッサージ」というい葉は、日本では「ドレナージュ」という言葉になじみがないため、分かりやすく「マッサージ」と訳されました。

また日本風のアレンジが加わって美容やリラクゼーションに特化した形で社会に広まったという説もあります。

なおリンパマッサージの圧の強さについては以下の記事もおすすめです。興味があればぜひ読んでみてください。

リンパを受講する際の注意点

さまざまな効果が期待される美容目的リンパドレナージュですが、施術を受けるにあたり、いくつか注意したい点もあります。

①施術者の技術
美容目的リンパドレナージュには、リンパケアセラピスト、リンパケアスペシャリスト、メディカルリンパセラピストといった民間資格はあるものの、国家資格ではないため、技術・知識レベルのばらつきが大きくなりがちです。

お店を訪れる前に、資格保持者がいるかどうかを直接店に尋ねたり、口コミサイトなどで評判を調べるようにしましょう。

②こんな場合は施術を控えよう
以下のような不調や病気、状況にある方は、体に変調をきたす可能性があるので、リンパドレナージュの施術は控えておきましょう。

  • 重い食事のあと
  • アルコールを飲んだあと
  • 熱がある、気分が悪い、吐き気のあるとき
  • リンパ節が腫れているとき
  • 喘息の発作があるとき
  • 重症の循環器系障害があるとき
  • 腎臓に障害があるとき
  • 甲状腺の機能障害があるとき
  • 免疫にかかわる疾患があるとき
  • 心臓疾患の方(ペースメーカーを入れている方含む)
  • がんの治療をされている方
  • 低血圧症の方
  • 妊娠中の方(特に妊娠初期)
  • 外科的手術後3週間以内の方
  • その他、重度の病気で現在治療を受けて受けている方

 

リンパドレナージュよりも病院に行った方が良い場合もありますので、気になる不調が続く場合は、早めにかかりつけ医に相談するようにしましょう。